たちばな し

休職と復職にかかる記録残しです。ビジネス論も少しあるよ。

調査結果を読み解くトレーニング

 

私は週刊東洋経済週刊ダイヤモンドの読者である。もう10年は読み続けていると思う。最近ようやく定期購読を始めた。月曜に休んだ週、買いに行くのが億劫だったり、書いそびれたりすることがなくなった。そして安価である。なぜもっと早くに定期購読にしなかったのか。

心理学の言うところによれば、人間長期的利益より短期的利益に目が言ってしまうそうだ。要は、私はどう見てもわかるような節約ですら苦手である。書いていて自分の心が痛む。奥さんはいくらへそくりこさえてもいいから経済的に強いひとを希望している。

 

ともあれ、今回は都道府県魅力度ランキングの話である。今年はひどい目にあっている茨城県の知事が憤慨したことで話題になった。今回は茨城県知事に諫言する、つっても目に触れることはないだろうけども、と同時に、茨城県民は知らぬとへらへらしていれば良いと、それを申し上げたく鍵盤を叩いている。なお、住所こそ東京都にあるものの私は生まれも育ちも茨城であり、心は茨城県人であるということを述べておきたい。

その上で「電気、上下水道、ガス、通信を「なんて素敵なの」っていうようなやつはいないし。茨城県民は内気で自慢は好まず慎み深い。色をなして不快感を表明するのは無粋であると知事には申し上げたい。茨城県人らしい反応だけど。

 

ともあれ、例のランキングはこの2つだ。

diamond.jp

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調査主体はブランド総合研究所

www.tiiki.jp

 

魅力度(地域ブランド指数とでも言えばいいのだろうか)の採点については次のようなパラメーターを使用しているとのことである。

◆調査項目◆
本調査は、1000市区町村および47都道府県を対象に全国の回答者からの評価を明らかにしたもの。
構成と調査項目は以下の通り。

①外から視点の評価 【計84項目、1000市区町村および47都道府県】
認知度
魅力度
情報接触
情報接触経路(ドラマや映画、ポスターやチラシなど)【14項目】
地域コンテンツの認知(「ご当地キャラクター」など【16項目】
地域イメージ(歴史・文化の地域、スポーツの地域など)【14項目】
地域資源評価(海・山・川・湖などの自然が豊かなど)【16項目】
居住意欲度
訪問目的(「行楽・観光のため」など)【16項目】
観光意欲度
産品購入意欲度
食品想起率
食品以外想起率

②内から視点の評価【計26項目、47都道府県のみ】
愛着度
自慢度
自慢要因(「地元産の食材が豊富なこと」など)【24項目】



調査概要(地域ブランド調査2019)
https://news.tiiki.jp/articles/4385

 

一方、観光魅力度については執筆時点で株式会社ブランド総合研究所サイト内にパラメーターを見つけることができなかった。
DOLでは下記の通り記載がある。たぶん上記調査のうち「観光意欲度」について抜き出した採点とランキングと見られる。僕がよっぽどのぼんくらでなければそう理解して間違いないだろう。

このランキングは、47都道府県と国内1000の市区町村を対象にした、認知度や魅力度、イメージなど全84項目からなる「地域ブランド調査2019」によるもので、今年で実施は14回目。「今後、各自治体に観光や旅行に行きたいと思いますか?」という問いに対して、「ぜひ行ってみたい」を100点、「機会があれば行ってみたい」を50点、「どちらもいえない」「あまり行きたいとは思わない」を0点として、加重平均した数値を算出した(有効回答数:全国3万1369人)

で、数値を抜き出したものがこちら。

  北海道 京都 東京 沖縄 神奈川 大阪 奈良 福岡 石川 長野 長崎 兵庫 静岡 宮城 広島 愛知 熊本 千葉 鹿児島 青森 秋田 大分 山梨 富山 福島 三重 山形 宮崎 新潟 岩手 愛媛 島根 香川 和歌山 高知 岐阜 山口 福井 岡山 滋賀 鳥取 埼玉 栃木 徳島 群馬 佐賀 茨城
魅力度 61.0 50.2 43.8 40.4 34.5 32.9 30.0 29.6 25.4 24.8 24.6 23.3 23.0 22.8 22.0 21.0 20.5 20.1 19.9 19.4 18.5 17.6 16.8 16.6 16.3 16.3 15.9 15.8 15.7 15.5 15.5 15.0 14.9 14.8 14.7 13.9 13.4 13.4 13.1 13.1 12.8 12.8 12.5 12.1 11.5 11.2 9.4
観光魅力度 61.8 52.6 47.4 51.0 39.7 42.9 43.2 43.2 42.0 38.1 40.9 39.2 36.3 36.4 38.1 31.3 37.8 34.5 37.1 32.5 31.2 33.6 31.1 34.5 27.3 33.2 30.6 33.2 31.4 30.5 31.5 30.5 33.6 30.8 31.5 30.6 29.1 29.6 28.6 28.5 31.8 22.8 26.5 28.3 26.5 25.9 20.4

 

意味もなくグラフ化したものがこちらである。視覚的にわかりやすくなったかもしれないがほぼ意味がなかった。なお、順序は左から魅力度が高い順番となっている。

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都道府県魅力度

 

2つについて、といってももともと同一の調査なのだからわざわざ比較することに意義があるのかという疑問が私の腹の底からふつふつと湧いてきたのだが、以下が概ね事実である。

下位5県は同じ顔ぶれ。福島を除外してよいのであれば下位12県は同じ顔ぶれである。
上位4都道府県は同じ顔ぶれ。入れ替わりがあるので間延びしているが、上位12都道府県は同じ顔ぶれ。
福島、山梨、秋田、愛知、香川が観光では目立って(5を超えて)観光魅力度では順位を下げた。
観光魅力度では高知、鳥取が躍進した。

 

続いて考察である。

まず、高知、鳥取については「行ってみたいけど行ったことがない」から「行ってみたい」にカウントされているのではないか。

チェーンのビジネスホテル、もう具体的に言っちゃうとルートインとかなんだけど、ビュッフェ形式の朝食を観察してみよう。みんなほとんど全部一通りおかずを皿に盛るはずだ。カリカリ梅と漬物とか、ジャンル的にも機能的にもかぶるやつは択一だとしても、ウインナー、シュウマイ、スクランブルドエッグ、魚の焼いたの、煮魚、、、おかずは全種類盛る。そして順序どおりに盛ってすべて盛って席につこうとする。省略を避けるし、取らなかったものはお代わりしようとかそういうのはない。白米を装う場所では渋滞が発生するが白米をキャンセルしたりもしない、待って盛る。

多分日本人は旅行・観光について、ホテルのバイキング朝食と同じようにあれもこれも盛るのだ。すると高知と鳥取は行ったこともないだろうし、いの一番の選択肢にならない。しかしそれぞれ坂本龍馬砂丘という知名度の非常に高い「〇〇といえば××」がある。まず行かない、でも行ってみたいところはある、それが高知と鳥取なのだ。もし得られるのならば来県者数のデータを見てみたい。少ないはずだ。

なお私は高知も鳥取も行った。北陸自動車道米山SA下り(東行き)のサバサンドを食べるためだけにSAに行き、食べて帰って来るだけというお出かけもしたことがある。私はそういう、旅の志向と経験という点では一般的日本人からは外れているつもりである。

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観光魅力度順のグラフ

観光魅力度順に並べ直したグラフがこれだ。赤い線と青い線の長さが近いと観光面以外の得点が高いということであり、目立つのはまず神奈川である。東京、大阪、愛知も同様の傾向が見られ、大都市圏なので当然といえば当然である。下位グループでは福島が目立つ。福島の総合的な魅力度の高さは理由に愛着の強さが挙げられるだろうが、果たしてそれだけなわけはないとみるべきだろう。

逆に周りと比べて青い線が短いと観光地としては魅力的だが。。。ということであろう。

 

 

しかしながら不思議なのは富岡製糸場や豊富な温泉がある群馬、日光がある栃木、いずれも世界遺産という観光資源を抱えながら底辺にいるのである。有名な温泉もなく、世界遺産もなく、スキー場もない我が茨城はさておくとしても頭をかしげるしかない。

 

 

「今後、各自治体に観光や旅行に行きたいと思いますか?」と尋ねられて、もちろん再訪したいというところはたくさんあるだろうが、ビュッフェであれもこれも一通り盛りたい民族であるところの日本人が、ちょっと行ってみたところ、または何回か行ったところに対して「ぜひ行ってみたい」「機会があれば行ってみたい」という選択肢を選ぶだろうか。時間と金銭の制約を思い、「どちらもいえない」「あまり行きたいとは思わない」を選びたくなるのではなかろうか。

 

採点方法にもトリックがあると見ている。

調査方法:インターネット調査
回答者:20代~70代の消費者を男女別、各年代別、地域別にほぼ同数ずつ回収します。
※日本の縮図になるように、年齢や地域人口の分布にあわせて再集計します。
有効回収数:約3万人(地域ごとの回答者数は平均で約560人)

東京都民は1200万、日本の総人口の10%いる。東京都市圏は3500万、総人口の1/3がいる。まずこの時点で回答が現在の人口の偏在に沿った偏り方になることに留意すべきである。3500万のうちほとんどは茨城をはじめ北関3県には行ったことがあるはずであり、かつ、もういいやと思われているのではないだろうか。観光資源の密度も低めで東京都市圏からは微妙な距離である。日帰りにはやや遠く移動時間が長くなり、スポットも詰め込めない。観光資源の密度は低めで泊まって見るには「まわりきらない」というほどではなく物足りない。

観光の魅力という点で北関3県ははじめからハンディをつけられているのであり、実利に邁進すればいいと思う。「行ってみたい」と言いつつ来もしない人より、別に大好きというわけではないけど何故か来ちゃう来県者の方が県経済にはありがたいわけで、そういう人にどお金を落としてもらうというところにだけ注力する、あざとさとでもいうようなたくましさが望ましいのではなかろうか。来県者と来県者の消費額というランキングがあれば、茨城は結構いいところ行ってると思うのだ。